2023/11/07
『星三百六十五夜』
野尻 抱影(のじり ほうえい) 著
野尻抱影(1885-1977)は英文学者であり、星空を愛し生涯その魅力を世の人々に語り続けました。星座の神話・伝説の紹介、日本固有の星の名前の収集、また「冥王星」の和訳命名者としても知られています。
本書の初版は1956年に中央公論社から出版されました。その『あとがき』には「終戦の秋のやりどころのない感情をようやく星に向けて、夜・昼書き続けた随筆集である。」と記されています。365夜、その月日の星座や星に向き合った著者自身の経験や古今東西の詩文が美しい日本語で綴られています。表紙や各月の扉にある星座の絵は野間仁根画伯によるもので、個性的で温かく大変魅力的なものです。
1960年以降、恒星社厚生閣から幾度か再版され、その過程で内容の一部は新稿と差し替えられ、また常用漢字、新カナ遣いに改められ読みやすくなりました。
著者は天文学者ではなく、一天文愛好家つまりアマチュアですが、常に科学的知見に立脚して自ら実際に星空を仰ぎ星座の動きを追い、また時には自身の天体望遠鏡、愛称“ロング・トム”を使って観察した事象をひとつひとつ丁寧に、星々への愛をもって綴っているので、今日の私たちにとって天文学そして星空に親しむための入門書として大変お勧めの本です。
現在入手しやすいのは2022年の中央公論新社版で、『春・夏編』と『秋・冬編』の2分冊となっています。初版以降の旧版も公共図書館に所蔵されているので、それらも読まれて内容の変遷を辿ってみると、より深く“抱影ワールド”に惹きこまれていくものと思います。
(紹介者:三島)
〜この本を探すには〜
発行年月日:2022/04/25
ISBN-10:4120055337
ISBN-13:9784120055331
発行年月日:2022/04/25
ISBN-10:4120055345
ISBN-13:9784120055348